人を磨く

心と技を木にたくす宮大工棟梁の仕事

宮大工とは、社寺・仏閣の建築を行なう大工の中の大工で、一人前になるまでは、厳しい修業を要するという。その中での棟梁の仕事は、選び抜かれた人間だけがなれる誇り高きもの。もちろん技術だけではなく、人間性をも大きく問われる。若き職人が憧れ、目指す仕事でもある。 遠坂棟梁は、この業界でも一目置かれている存在で、技、人間性共に高い評価を得ている。これまで自分の技を磨くためには努力を惜しまず、ひたむきに大工人生を歩んできた。今でも自分自身の技の追求に余念がないが、その技を次世代へと残すために、若者の育成にも取組んでいる。これまで培ってきた大工の仕事に対する自信と信念がみなぎる、そんな棟梁の仕事ぶりをのぞいてみる。

匠の心意気

職人インタビュー No.01

荒巻健治さん

昭和54年8月生まれ

出身:福岡県出身

家族構成:妻、子供1人



Q:宮大工の道を志したきっかけは?
幼い頃、祖父の大工姿にあこがれたのが最初のきっかけでした。高校で土木科に進学し、卒業後の進路を決める際、知り合いの大工さんが「せっかく大工になるなら、上を目指せ!」と、宮大工になることを勧めてくれ、この世界に飛び込みました。

Q:修行は厳しかった?
何をするにも、一度は教えてもらえますが、それから先は「見て盗め!」が先輩の指導でした。刃物の研ぎ方、ノミの使い方、墨の付け方、失敗をしながら身につけていきました。厳しいし難しかったけど、それ以上のおもしろさを知ったのでやってこれたのだと思います。

Q:何がおもしろい?
奥の深さでしょうか。木材一本とっても、同じ木は一つとしてないんです。曲がり具合も硬さも木目も違います。つまり、毎日新しいものに出会い、毎日新しいものに挑戦することができるから、飽きることがないんです。

Q:一番思い出に残った建物は?
それぞれに、たくさんの思い出がありますが、入社して10年が経ち、今年(2007年)初めて棟梁として携わった安養寺の修復工事はやはり特別な思い入れがあります。責任の重さが大きかった分、完成した喜びもひとしおでした。

Q:今後の目標は?
これからも一生勉強なので、頂点に立つことはありませんが、物件を重ねるごとに、より完成度の高いものにしたいです。まずは、自分も納得し、施主様にも『よくできた』という言葉をかけてもらうのが一番の目標です。

 


 

職人インタビュー No.02

遠坂 馨さん

昭和48年12月生まれ

出身:福岡県

家族構成:妻、子供2人



Q:宮大工の道を志したきっかけは?
中学時代、太宰府天満宮や祐徳稲荷など、近くの大きな神社に行った時に、その建物の美しさに魅せられて、純粋に「作ってみたい!」と思いました。高校入学後、学校で勉強をするか、早く技術を身につけるかを悩み、途中で学校を休学して田中建設にお世話になることにしたのです。で、結局学校には復帰せずそのまま宮大工の道をまっしぐらです。

Q:そうさせた一番の決め手は?
毎日何かを得ることの楽しさ、これに尽きると思います。毎日違う木と向き合い、毎日試行錯誤をしてコツコツと建てていく。昨日と同じ、前回と同じ、なんてことが一度もないんです。つまり、それだけ日々が新鮮で充実していたから、ということなんでしょうね。もちろんそれは今も変わりません。

Q:初めて棟梁をされた時のことは覚えていますか?
 はい。仕事を初めて10年経った頃に、猿田彦神社の修復を担当したのが初めてでした。(要確認)目の前の仕事だけではなく、進捗状況や人間関係などすべてのことを見ていくことの大変さを経験し、10年間やってきたけど、まだまだ何も身に付いていなかったなとあらためて感じたのをよく覚えています。

Q:棟梁として特別に勉強していることは?
技術面ではたくさんの先輩職人の皆さんに助けてもらいながら棟梁の仕事をしているので、その分いろんな建物を見に行って勉強するようにしています。見る力、感じる力をつけたいなと思って。

Q:棟梁としての一番の喜びは?
一職人であっても、棟梁であっても、やはり一番の喜びは完成した時。そして、そこを使っている人たちの笑顔を見た時です。神社やお寺というのは、特定の人ではなく、その地域の多くの人が利用するものです。1000人、2000人の人たちがそこに集ってお参りをしている姿をみると、自分のしている仕事にこの上ない喜びと誇りを感じます。